日の出た午後。

5m先、コンロの上にあるフライパンを振ろうと思って

ソファの上からじっと見つめてしまっても

誰もぼくをとめる人はいないけれど、

ただそっと肩を撫でて欲しいだけと分かってほしい。

視線をゆっくりと下げて、

へそ辺からゆっくりと、裏側をめがけて旅に出ようとするぼくを

とめる人はいないけれど、

ただいい音楽を作りたいだけだと分かってほしい。

玄関のドアで来客を伝える金属同士のぶつかる音がする。

そのドアの向こうの訪問者を温かく抱きとめることは出来ないけれど

ただぼくは人を悪く思っていない事を感じてほしい。

庭の向こうの邸宅に大きな、とても大きなみかんの樹から

ソフトボールよりも2まわりも大きなみかんが、

日の差す午後にだけ落ちてくる。

2度バウンドする音は、部屋に居留守を使うぼくを驚かせる。

落ちたからといって、今さら拾いにはいかないぞ。

なぜなら、はじめて落ちた日のこと。

それがとてつもなくすっぱいことを知ったからさ。

あやべ

One Comment

  1. フジッコ
    Posted 2013/07/06 at 12:06 AM | Permalink

    なんだか詩みたいで素敵な文章ですね。

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